2020年1月17日に小泉進次郎・滝川クリステル夫妻に第1子が誕生したということで、関連する制度について大まかに書いてみます。
2人は2019年8月8日に婚姻届を提出したとのことなので、子どもの誕生までに婚姻から200日を経過していない模様です。
1 嫡出推定
嫡出推定とは、妻が婚姻中に懐胎した子を法律上夫の子と推定すること(民法772条1項)。また、婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定される(民法772条2項)。
法律上の父子関係を早期に安定させるための制度(母子関係は出産の事実から通常明らか)。
2 嫡出否認
嫡出推定が及んだ子は、仮に夫以外の男性との間に生まれた子であっても、法律上も夫の子として扱われるのが原則。その結果、嫡出推定が及んだ子について夫の子であることを否定するためには、特別な裁判手続によるものとされる。
これが嫡出否認の訴え。
嫡出否認の訴えは、出訴期間が夫が子の出生を知った時から1年以内とされるなど要件が厳格。
3 救済措置
嫡出推定が及ばない場合、本来は非嫡出子として出生届をすることになるはずだし、そのような届出(父の欄を空欄とする届出)も可能。
しかし、実際は救済措置が講じられている。
実務上は、親が婚姻している場合は婚姻に先んじて内縁関係が生じていたものとして、夫婦の嫡出子として出生届が提出できることになっている(昭和15年4月8日民事甲432号民事局長通牒)。役所は内縁関係先行の審査は行わない。
したがって、小泉夫妻の子も、「推定されない嫡出子」として届出可能。
4 推定されない嫡出子と親子関係の争い
「推定されない嫡出子」は民法772条による嫡出推定を受けないことから、親子関係を争う場合には嫡出否認の訴えではなく、要件のゆるい親子関係不存在確認の訴えによる。
大沢樹生が、喜多嶋舞の生んだ子との間に親子関係がないことについて子どもが大きくなってから裁判をしていたが、これは親子関係不存在確認の訴え。
5 DNA鑑定と嫡出推定
前述のとおり嫡出推定が及ぶ場合に夫との親子関係を否定するには提訴要件の厳格な嫡出否認の訴えによる必要がある。
しかし、DNA鑑定で夫と子との間に血縁上の親子関係がないと判明した場合はどうだろうか? 夫が子の出生を知った時から1年より後に親子関係不存在確認の訴えで争えないのだろうか?
この論点について最高裁は以下のように判示した。
「民法772条により嫡出の推定を受ける子につきその嫡出であることを否認するためには、夫からの嫡出否認の訴えによるべきものとし、かつ、同訴えにつき1年の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上から合理性を有するものということができる。
そして、夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、夫と妻が既に離婚して別居し、子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。」(最高裁判所平成26年7月17日判決)
最高裁によると、このような托卵事例?において親子関係不存在確認の訴えは使えないということですので、他に親子関係を切る方法として特別養子縁組がいちおう検討できるでしょうか??
特別養子縁組にもタイムリミットはあるし、戸籍はきれいになりませんが。。。